男と女の違いについて

       昔から,身体的な見た目や振る舞いを指して「男らしい」「女らしい」といった言い方をよくしますが,男と女には見た目だけでなく性格にこそ随分大きな違いがある様に思われます。

職業柄,幼い子どもからお年寄りまで幅広い年齢層の方々と数多く接しますが,男女間の性格の差は一般的に言われてきた「男らしい」「女らしい」とは裏腹に,男のほうが軟弱な場合が少なくありません

ある程度言葉でコミュニケーションがとれる幼児では,男の子は痛い事をされるのではないかという恐怖心が彼の心を全面的に支配しているため,いくら優しそうな顔を取り繕って説得しても,聞く耳持たずといった具合でただ泣き喚くだけ!一方,女の子の場合は恐怖心はあっても周りの状況を冷静に観察する能力はすでに備わっており,こちらの眼をじっと見つめながら,こいつは本当のことを言っているのか騙しているのかどちらかな?と怪訝そうに眺めています。痛くないよと嘘をつく眼はすぐに見透かされてしまう場合が多く,その様な子には少し痛いけど我慢してね。と母性本能を擽るように頼み込んでお願いすると,小さく‘うん’と頷いてくれます。怪我の処置の際などに,痛くて動こうとする子に対し,「おとなしくしていれば後で何か御褒美をあげるから」という子供だましの言葉は最近の子にはあまり通用しませんが,我慢するといってくれた女の子の場合は,「もう少しじっとしていた方が綺麗に傷が治るよ」と言うと,じわ〜と涙を浮かべて唇を震わせながらもピタっと動かなくなります。男の子の場合は最初から泣き喚くだけ。傷も汚くていいからほっといてと言う子が大半で,数人がかりで押さえ込んで処置をする事になります

大人の場合にも男と女では違いは歴然です。男の人は付き添いを連れてみえる場合が多く,診察室まで奥さんが同伴で入って来られる場合も少なくありません。病気や薬の説明を一緒に聞くだけでなく,何時からどのような症状があったかなどを事細かく説明されます。男は,子どもの頃にお母さんに付き添われて病院に来た時と同じ様にじっと座って奥さんが答えるのに頷いているだけ。男の人が皆この様だとは言いませんが,少なくとも女の人でこの様な方はあまり記憶にはありません。また,一人で来院された方でも後から電話で問い合わせをされる場合はたいてい奥さん。良妻賢母というのは,御主人に対して奥さんが一人二役をしている事を指すのではないかと思えてきます

入院や手術が必要になった場合の対応の仕方にも男と女には歴然たる差が見受けられます。全くうろたえてしまってこちらの説明をほとんど理解していないばかりでなく,誤解してしまっている人が男の人に比較的多く見受けられますが,女の人はまるで他人事のように冷静に受け止められる方が多く,説明を聞いている最中でさえ,もう入院の日や手術の日,入院するまでの段取りや,はたまた退院してからの予定まで頭を巡らせてみえる場合も少なくありません。悪性の病気の場合にはなお更で,男の人は幾ら詳しく説明してもなかなか受け入れてもらえない場合が多く,手術が終わって暫くしてからでも「ところで私の病気は悪性ではなかったのでしょう?」と何度も同じ質問をされます。勿論,最初から病名はくどい程説明しているにも関わらずです。その点,女の人はさばさばして見える方が多く,悪いところを取ってもらってさっぱりしたと言われる方も少なくありません。

高齢になり身体が不自由となって介護保険を利用されてみえる方でも,女の方は積極的にデイサービスを利用して友達を沢山つくってみえますが,男の方は一度行ったきりでもうあんな所へは二度と行かん!といわれる方が多いように思われます。御主人のデイサービス利用の付き添いのため介護認定を受けたいといわれる女の方も沢山見えます。介護する方の負担を軽くするための介護保険利用にも奥さんの付き添いが必要なようです

配偶者に先立たれた人達を数多くみていますと,つくづく男と女の違いを感じます。男の方はいっぺんにボケが始まり寝たきりになってしまう方が多いようですが,女の方はこれまで夫の面倒で自分の時間が取れなかった分を取り戻すかのように,趣味のサークル活動や老人会などに参加し,友達との食事会や旅行にと社交的に振舞ってみえる方が多く,「老いてこそ人生」を実践されてみえます

この様にみてきますと,男の人は物心付いた幼児期は母親が,結婚してからは奥さんがずっと保護者として見守ってあげないと一人ではなにも出来ないのかもしれません。

一見,男の人が女々しくて優柔不断,女の人が社交的で実行力があるようにもみえますが,裏を返せば,男の人は幼い時には母親,大きくなってからは妻に対し一途に忠誠をつくしており,女の人は物心付いた時から周りの状況により自分に有利に働くように上手に振舞えるのかもしれませんね

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